トキめき会発足の背景
普段の身体活動量や歩行速度の低下は、あらゆる年代の方々の死亡、将来の病気の発症、要介護状態への移行を予測する強力な因子であることが知られています。我々の行った先行研究では、心臓疾患を有する高齢者の時速3.6kmを下回ると、死亡リスクが高まることが1300人を超える患者のデータで明らかとなっています。したがって、歩行速度は極めて重要な健康指標である可能性があります。トキめき会では、「若さ」の指標である歩行機能の低下を早期に捉えることで、生きがいに満ちた未来の佐渡市を目指しています。
しかし、現在、医療機関や健康施設を除いて通常の歩行速度をご自身でモニタリングする方法がないため、歩行速度が大きく低下した後に気づくのが現状です。近年、人工知能の技術革新により、比較的正確に人の歩行速度や階段昇降速度などを把握できるようになってきており、技術的には上記の課題を解決するためのツールを開発することが可能となってきました。
そこで、本研究はスマートフォンから得られた歩行を解析するための人工知能を用いて、長期間に渡り研究参加者の皆様の歩行速度や行動範囲を測定して、現在の(あるいは将来の)運動・精神機能、生活機能、疾病の発症や入院、要介護状態への移行、死亡など重要な事象を予測することが可能か否かを、明らかにすることを試みます。
対象と方法
1.トキめき会で対象とする方
1) 「さどひまわりネット」に同意されている方*
2) スマートフォンを使用されている方
3) お一人で歩行可能な方
*当日、会場でひまわりネットへの登録も可能です。
上記3つが本研究の対象者となる条件です。本研究の対象者となる方には、同意書に署名して頂き、その後も追跡調査をさせて頂きます。ただし、トキめき会で実施する測定会に参加を希望する方は、どなたでもご参加可能です。スマホをお持ちでない方、ひまわりネットへの登録に同意されない方も測定会にはご参加いただけますが、参加特典の商品券のお渡しができかねます。
2.測定会で測定する項目
1) バイタルサイン:血圧、脈拍数、体温、酸素飽和度
2) 歩行速度:10mを歩くのにかかる時間を計測
3) 筋力:ハンドヘルドダイナモメーターと握力計を使用して脚と腕の筋力を測定
4) バランス機能:片脚で立てる時間
5) 体力:6分間で歩ける距離
6) 全身の筋肉量:TANITAの体組成計を使用
7) 脚の筋肉の厚み:超音波画像診断装置を使用
8) 手足の太さ、腹囲
9) 呼吸機能:スパイロメータを用いて呼吸機能と呼吸筋力を測定
10) 認知機能:認知症のリスクを評価します
11) 視力、聴力
測定会の所要時間は3時間程度を予定しております。
3.情報収集する項目
1) あなたの診療録から下記のデータを収集します:氏名、性別、生年月日、被保険者番号、病名、手術を含む処置名、処方内容、注射内容、検体検査として収集可能なすべての項目、細菌検査結果、一般レントゲン画像、Computed Tomography (CT) 画像、Magnetic Resonance Imaging (MRI)、乳腺撮影、内視鏡画像、PACS管理の超音波画像、入院サマリ、リハビリ記録、服薬指導記録、栄養指導記録、画像診断レポート、処方内容(用法を含む)、血圧、脈拍数、心拍数、体温、介護度、基本的ADL、手段的ADL
2) あなたのスマートフォンにアプリをインストールして、下記の情報を収集します:位置情報(国、市区町村、道路名、場所、経緯度、名称)、歩行距離、歩行時間、非歩行時間、移動手段(例:歩行、車、自転車、電車、バス等)、移動経路、行動の開始時間/終了時間
4.アプリインストール
あなたのスマートフォンに研究者が指定するアプリをダウンロードしていただきます。研究期間中は、アプリをダウンロードしたスマートフォンを使用・携帯していただきます。スマートフォンをお持ちでない方は、アプリのインストールは行いません。アプリのインストールをしなくても測定会にはご参加いただけますが、参加特典の商品券のお渡しができかねます。
アプリ名称:Personary, GoogleFit
5.測定会を参加した後の追跡調査
1年に2回計測に参加して頂き、3に記載した測定項目を繰り返し測定します。死亡の有無および死因、入院イベントの有無、あらゆる疾病の発症及び増悪、転倒及び転倒骨折の発生、要介護状態への移行、サルコペニア*、フレイル*、ダイナペニア*、カヘキシア*などの発生を調査させて頂きます。
*サルコペニア:加齢による筋量低下
*フレイル:身体的機能や認知機能の低下が見られる状態のことを指しますが、適切な治療や予防を行うことで要介護状態に進まずにすむ可能性があります。
*ダイナペニア:筋量が維持されているにも関わらず筋力が低下した状態
*カヘキシア:何らかの疾患を原因とする栄養失調により衰弱した状態
6.測定結果の説明
測定された身体・認知・精神機能のデータについては、測定後にすぐに説明いたします。スマホデータについては、原則的にデータの説明は致しません。得られたデータは、個人が特定できないように処理した後、クラウド上で保存されます。
7.研究結果の使われ方
研究結果は学会や科学雑誌に論文として公表しますが、その際には個人が特定できないよう配慮いたします。研究参加者の皆様からの研究内容に関する問い合わせについては、いつでも受け付けています。